top » 大学付属施設

大学付属施設

東京大学総合研究博物館

伊能中図

関東を欠く伊能中図7枚を所蔵する。北海道の2枚は写本で針穴がない。残り5枚は針穴のある副本である。いづれも、来歴は不明確で、理学部の事務室でひどい状態で見つかったものを整備して襖仕立てとしたという。

副本の5枚はひよっとしたら、東大の図書館に保管中に関東大震災で焼失したといわれている中図かもしれない。内容的には伊能家控え図であってもおかしくない出来栄えである。

この五舗に共通な特徴をあげる。方位線、経緯線、経緯度、国名(二重枠)、郡名(一重枠)、宿駅、城下、国界郡界、神社、湊、天測地点、などを記載する。寺院には名称だけで記号のないもの、記号があって名称のないものなどがごく一部にみられる。文字は丁寧な達筆。山景の緑は淡彩である。


東京大学総合研究博物館
 
中部縦229 x 横131.5糎 サイズは襖表面部(接合記号の中心相互)。一番綺麗である。
中四国縦227.5 x 横130.5糎 虫、傷なし。大山寺、紀三井寺など、寺名はあるが記号はなぃ。
北九州縦145 x 横161糎 図縁に破れ。傷二カ所(10糎 x 15糎程度)。読図に支障はない。中央部少し変色するが汚れ少なぃ。
南九州縦150糎 x 構152糎 虫、損傷はなぃ。
奥州縦220糎 x 構160糎 中尊寺に寺院記号がある。瑞巌寺は寺名がないが、記号がある。傷少なく虫ほとんどない。方位線の本数は、つぎのとおりである。
蝦夷大島へ集中する方位線東大中図12本  東博中図9本
蝦夷小島へ集中する方位線東大中図12本  東博中図10本
岩木山へ集中する方位線東大中図13本  東博中図10本

蝦夷東および蝦夷西の二舗は、針穴がないほか、他の五舗よりさらに淡彩で、傷み、虫食い、汚れがある。元折本。全体に退色が強い。著名な山岳を描き、山裾に震の描写がある。 ( 本州の五舗にはない )緑が淡く、宿駅の ○ 印が大きい。蝦夷西は、他の中図にない北蝦夷( 樺太 ) の一部が描かれている。また、蝦夷大島、蝦夷小島は東博中図では奥州の部にあるが、本図は含めている。経緯線はあるが度数の記入がない。など五舗とは明らかに異質のものである。

本調査では、国土地理院の長岡地図部長、本会理事の清水靖夫氏のご援助を頂きました。誌上にて御礼を申し上げます。

このほか、図書館には伊能忠敬測地原稿図と題する桐箱入りの測量下図93枚を所蔵する。東大に伊能図を売り込みに来たものがある、との記録も残っており、古書界に退蔵されている伊能図は、まだまだありそうである。

▲このページのトップへ