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新しい伊能測量船団絵巻の出現


  2012年12月に配布された思文閣出版(京都)の古書目録に、新しい伊能測量船団絵巻が出ていると、呉市の入船山記念館の津田さんから連絡があった。北海道在住の伊能忠敬研究会員で北方図・伊能図研究家の高木さんにお話したら彼も注目していた。コピーをもらったが、値段が262,500円とえらく安い。これはお宝発見と、津田さんに聞いて貰ったら売却済だという。逃がした魚は大きいというが、静かな忠敬ブームが続いている現在、この図は是非世の中に出てきて欲しいと思う。売って貰わなくて結構であるが、史料として写真を撮影させて戴けるとありがたい。有名になれば、価値もあがるだろう。このメッセージが、伊能測量に御関心があるであろうお買主の方に届くことを期待している。小さなカタログ画面を熟覧すると、描画のトーンは呉市入船山記念館保管の、伊能測量風景を描いた浦島測量の図と大変よく似ている。梵天や象限儀があって海岸の測量場面に間違いはいなく、沿岸の描き方、人物の描写・動作や、親船があってお供の船が続いているなど、浦島測量之図と同時期に描かれたように思われる。法量は縦29.1cm(浦島図は26.5cm)、横260cm(浦島図420cm)であるから、形態もほぼ似た巻子本である。江戸後期、巻末に朱印というから興味深い。

 親船には曳船が描かれ綱で引いている。広島藩の測量船団構成記録のなかに、漕船と出てくるので、多分曳船だと思っていたが、この絵巻では一目瞭然で、曳船が親船を引っ張り、親船から旗を振って指示が出ている。曳船が描かれた伊能測量船団絵巻は初めてである。 当時のものと考えると値段が安すぎるなと、知り合いの古書店に聞いてみたら、思文閣は確りした書店で、値付けに問題はないと思う。写しなのではないか、との意見だった。写しでもなんでも、当時の風景を描いたもので、それしか無ければ、中央紙の一面に登場しておかしくない貴重な大発見である。ぜひ実見調査したいと考えているが、古書店の仁義として、売り手、買い手の名前は明かしてもらえない。
 是非、御本人から名乗り出ていただけると有難いと思っている。眼福に預かれるなら、これまでの伊能忠敬と伊能図に関する知見にもとづいて、適切に評価し、広く世間一般に紹介したいと考えている。ご連絡をお待ちしています。

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