米澤城下での観測

米澤城下での観測享和2年7月5日（1802-08-02）観測恒星数：16 星

　小説「汐さいの地図」梅田うめすけ著（ごまめ書房）の米澤城下で、上杉家の前藩主上杉治憲（鷹山）が訪ねてきて、会談の模様の興味深い記載があります。帰り際に「さて、推歩先生は天の道も歩かれて測る由、暗くならないうちに退散いたしましょう」と別れます。作家の創作ですが、本当に鷹山と日本地図の制作について会話したと錯覚してしまいます。
　測量日記には「・・・米沢城下（上杉弾正大弼（だんじょうだいひつ（居城）東町九ッ半後（12時頃）に着。止宿遠藤孫左衛門。家作よし。・・・止宿へ米沢家士今泉元四郎見廻に来る。・・・此夜雲間測量。」と記載されているだけです。
　天測は以下に示す通り、19:25に第1星を観測。雲間に測量とありまずが21:41まで16星を観測し、この地の緯度を37度54分20秒、最終的には37度54分30秒としました。

観測地の位置

この測量で決定した緯度：37度54分20秒

実測録の緯度（最終値）：37度54分半

経度（推測値）東経：140度7分21秒

観測した恒星

北極高度測量記（原文）

千葉県香取市　伊能忠敬記念館所蔵

解読

no	名称	バイエル符号現行名	観測高度度　分　秒			向	時刻	極差度　分　秒			決定した緯度度　分　秒			隠宅での高度度　分　秒			赤道緯度度　分　秒			備考
1	韓（かん）	ζOph へびつかいζ	41	54	35	南	19:25	2	14	5	37	54	35	44	8	40	-11	49	10
2	天紀二（てんきに）	ζHer？ヘルクレスζ	84	1	35	南	19:32	2	13	35	37	54	5	86	15	10	31	55	40
3	天紀北増一（てんきほくぞういち）	ηHer ヘルクレスη	88	34	13	北	19:34	2	14	13	37	54	43	86	20	0	39	20	30
4	斛一（こくいち）	ιOph へびつかいι	63	34	55	南	19:46	2	13	35	37	54	5	65	48	30	11	29	0
5	勾陳三（こうちんさん）	εUMi こぐまε	45	33	15	北	20:06	2	13	45	37	54	15	43	19	30	82	21	0
6	宋（そう）	ηOph へびつかいη	36	36	30	南	19:59	2	14	0	37	54	30	38	50	30	-16	31	0	観測が遅れた？
7	魏（ぎ）	δHer ヘルクレスδ	77	8	20	南	20:05	2	13	55	37	54	25	79	22	15	25	2	45
8	候（こう）	αOph へびつかいα	64	47	15	南	20:24	2	13	45	37	54	15	67	1	0	12	41	30
9	天棓三（てんぽうさん）	βDra りゅうβ	75	24	15	北	20:24	2	14	15	37	54	45	73	10	0	52	30	30
10	天棓一（てんぽういち）	ξDra りゅうξ	70	59	45	北	20:48	2	13	55	37	54	25	68	45	50	56	54	40
11	天棓四（てんぽうし）	γDra りゅうγ	76	21	15	北	20:50	2	13	45	37	54	15	74	7	30	51	33	0
12	中山（ちゅうざん）	103Her ヘルクレス103	86	46	45	南	20:57	2	14	15	37	54	45	89	1	0	34	41	30
13	斗宿二（としゅくに）	λSgr いてλ	26	34	20	南	21:13	2	13	0	37	53	30	28	47	20	-26	27	50
14	織女（おりひめ）	αLyr ことα	89	17	35	北	21:28	2	14	35	37	55	5	87	3	0	38	37	30
15	漸臺二（ざんだいに）	βLyr ことβ	85	12	45	南	21:40	2	13	15	37	53	45	87	26	0	33	6	30
16	斗宿四（としゅくし）	σSgr いてσ	25	33	15	南	21:41	2	14	15	37	54	45	27	47	30	-27	28	0

米澤城下東町の観測順序

　忠誨の恒星全図部分、米澤城下東町で恒星の観測順序を数字で表示。赤の番号は南向き、青は北向きでの観測を示しています。青円は米澤城下東町の天頂を示しています。

↓天頂

千葉県香取市　伊能忠敬記念館所蔵

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